不妊治療に関する情報を探している人へ、鍼灸施術所の情報を届けたいと考える運営者は少なくありません。しかし、「不妊鍼灸」「妊娠率アップ」といった分かりやすい表現を、そのまま広告へ使用できるとは限りません。
確認すべきルールは、広告文だけではありません。リスティング広告やSNS広告から遷移するLP、施術所名、体験談、配信時のオーディエンス設定まで、一連の導線を分けて確認する必要があります。
さらに、病院・診療所が行う医療広告と、鍼灸施術所が行う広告では、主な適用制度が異なります。本記事では、2026年9月3日時点の公式資料を基に、両者を分けて実務上の確認点を整理します。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の広告が適法であることを保証するものではなく、法的助言でもありません。具体的な表示は、施術所を所管する自治体や保健所へ確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。
鍼灸施術所と病院・診療所では広告のルールが異なる
最初に確認したいのは、誰が、どの施設のサービスを広告するのかです。
鍼灸施術所の広告は、主にあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第7条と、厚生労働省のあはき・柔整広告ガイドラインを基に確認します。広告できる事項は限定されており、客観的に確認できる情報が中心です。
一方、医師が診療を行う病院・診療所の広告は、医療法と厚生労働省の医療広告等ガイドラインが主な確認対象です。医療機関が行う不妊治療の広告と、鍼灸施術所が行う鍼灸施術の広告を、同じ基準で処理することはできません。
医療広告には、一定の条件を満たしたウェブサイトで広告可能事項の範囲を広げる仕組みがあります。しかし、この仕組みを鍼灸施術所の広告へそのまま当てはめて、「ウェブサイトなら施術効果を書ける」と判断するのは避ける必要があります。
また、鍼灸施術を医療機関の不妊治療と同じものに見せたり、医療行為の代替になると受け取られる表現にしたりしないことも重要です。医療機関との連携を掲載する場合も、実際に確認できる事実の範囲を明確にし、推薦や効果保証のように見せないようにします。
リスティング広告やSNS広告は広告に該当し得る
あはき・柔整広告ガイドラインでは、広告に該当するかどうかを、主に次の三つの要素から判断します。
- 利用者を施術所へ誘引する意図があること
- 施術者や施術所を特定できること
- 一般の人が認知できる状態であること
通常の施術所ウェブサイトは、一般に認知性を欠くため、あはき法上の広告に該当しないと整理される場合があります。ただし、ウェブ上にあるだけで必ず広告規制の対象外になるわけではありません。
検索結果へ表示するリスティング広告、バナー広告、動画広告、SNS広告、有料の紹介ページなどは、三つの要素を満たして広告に該当する可能性があります。その広告から特定のLPへ誘導している場合は、広告文と遷移先が一体として確認されることも想定しておく必要があります。
そのため、広告文だけを控えめにして、LPで強い施術効果を訴求する方法は安全とはいえません。「これは広告ではありません」と表示しても、実際の内容や導線が広告の要件を満たしていれば、その記載だけで判断が変わるとは限りません。
配信エリアまで含めた設計を行う場合は、規制上利用できる表現とターゲティング手法を確認したうえで、店舗広告のエリアターゲティングを決める前の確認順も参考にしてください。
有料広告では客観的な列挙事項を中心にする
鍼灸施術所の広告では、広告できる事項が法律や告示で限定されています。実務では、次のような客観的事実を中心に組み立てます。
- 施術者が「はり師」「きゅう師」であることや、施術者の氏名
- 「はり」「きゅう」という業務の種類
- 施術所名、電話番号、所在地、案内
- 施術日、施術時間
- 予約、休日・夜間の施術、出張施術、駐車設備
- 届出を行った施術所であること
- 告示で認められたその他の事項
「国家資格保有」は、「はり師」「きゅう師」などの資格名に添えて表示する形が示されています。資格と関係なく、施術所全体の優位性や高い技術を示す文脈へ広げないことが大切です。
療養費について案内する場合は、対象となる施術に医師の同意が必要である旨も明確にします。「保険が使えます」とだけ記載し、適用条件を省略しないようにします。
これらは、どのような見せ方でも認められるという意味ではありません。掲載事項自体が事実でも、全体として施術効果や他院より優れていることを暗示すれば、別の問題が生じる可能性があります。
「不妊鍼灸」は施術所名や広告文脈に注意する
あはき・柔整広告ガイドラインは、施術内容や施術方法を含むため広告上認められない施術所名の例として、「不妊鍼灸」を挙げています。「レディース鍼灸」など、特定の疾患や対象、施術内容を想起させる名称にも注意が必要です。
ここで重要なのは、「不妊鍼灸」という語が、あらゆる媒体のすべての文章で一律に使用禁止であると広げて解釈しないことです。ガイドラインが示しているのは、施術所名や広告としての表示に関する例です。
一方、中立的な情報記事に見えても、特定の施術所へ誘導する内容や予約導線があり、広告の要件を満たす場合は、ページ全体で確認する必要があります。記事の見出しだけを情報提供風にして、本文やボタンで「妊娠を目指すなら当院へ」と強く誘引する構成にすれば、名称だけを切り離して判断できません。
広告では、施設の客観的な情報を見出しに置き、不妊に関する説明は、広告該当性と掲載根拠を確認したうえで扱います。語句を置き換えるだけで規制を回避しようとせず、ページが利用者へ何を約束しているように見えるかを確認することが重要です。
妊娠率や体験談を集客の根拠にしない
不妊領域では、利用者が結果を強く求めているため、広告表現も成果を約束する形になりやすい傾向があります。しかし、鍼灸施術所の広告では、施術効果、施術方法、技能や経歴を自由に訴求できるわけではありません。
たとえば、次のような表現は広告候補から外し、個別に根拠や規制を確認する必要があります。
- 「妊娠率が上がる」「着床率を改善する」
- 「3回の施術で妊娠を目指せる」
- 「流産を予防する」「必ず結果が出る」
- 「体質から根本治療する」
- 「不妊専門」「地域で最も高い技術」
- 「妊娠実績○件」「満足度No.1」
これらは、結果の保証、施術効果、技能、比較優良などの訴求につながりやすい表現です。客観的な調査や数字があっても、広告可能事項になるとは限りません。
利用者の体験談やビフォーアフターも、施術効果を印象付ける目的で選んで掲載すれば、誤認を招く可能性があります。病院・診療所を対象とする医療広告でも、患者の主観的な体験談や、治療結果を誤認させるビフォーアフターは制限されています。医療広告ガイドラインに関するQ&Aでは、「2週間で90%の効果」のような効果率の表示も認められない例として示されています。
医療広告の例を鍼灸施術所へ直接適用するのではなく、まずはあはき法とあはき・柔整広告ガイドラインを確認します。そのうえで、利用者の不安や期待を利用した断定、根拠を確認できない数値、選択された体験談に頼らない構成へ整えます。
LPでは施術内容・費用・リスクを分かりやすく示す
自費施術を案内するウェブサイトやLPでは、魅力を伝える情報だけでなく、利用者が判断するための条件も見つけやすく表示します。あはき・柔整広告ガイドラインでは、次の情報を掲載することが望ましいとされています。
- 問い合わせ先
- 実際に提供する施術内容
- 通常必要となる費用
- 主なリスクや副作用
- 標準的な施術期間や回数
費用が施術内容によって異なる場合は、代表的な金額だけを強調せず、通常想定される範囲や追加条件を説明します。リスクや期間などの重要情報を極端に小さな文字へしたり、何度も遷移しなければ読めない別ページへ置いたりしないようにします。
「鍼灸は不妊治療を支えます」といった表現も、それだけで安全な定型文になるわけではありません。実際の提供範囲と一致しているか、医療上の効果を約束していないか、医療機関の診療と誤認させないかを確認します。
広告文、LP、予約フォームを別々に確認するのではなく、最初の表示から申し込みまでを一つの導線として読み返してください。LP制作と広告運用を同時に見直す際は、地方のWeb広告を始める前の判断基準で解説している成果計測の考え方も参考になります。
Google Adsでは不妊関連のターゲティングにも制限がある
法律や厚生労働省のガイドラインに加えて、広告媒体のポリシーも確認します。
Googleのパーソナライズド広告ポリシーでは、妊娠や不妊の治療に関する情報が、センシティブな健康上の関心として扱われています。そのため、顧客リストやサイト訪問者などを基に広告主が作成するオーディエンスは、利用方法が制限される可能性があります。
不妊に関するページを閲覧した人のリストを作成し、その関心を前提に広告を追跡表示する設計は、公開前に利用可能な機能と最新ポリシーを確認してください。検索キーワードや地域を使う配信であっても、国内の広告規制やGoogleの他のポリシーが適用されます。
Googleには避妊・不妊・検査に関する地域別ポリシーもあります。公開日時点では禁止地域の一覧に日本は含まれていませんが、これだけを根拠に「日本では不妊関連広告を無条件で出稿できる」と判断することはできません。広告内容、リンク先、ターゲティング方法、アカウントの条件ごとに審査される可能性があります。
媒体ポリシーは更新されるため、過去に承認された広告をそのまま再利用せず、入稿時の公式情報と管理画面で再確認します。
公開前は広告文・LP・配信設定を一つの導線で確認する
不妊領域の鍼灸広告は、NGワードだけを置き換えて完成するものではありません。公開前に、次の順番で確認します。
- 広告主体が鍼灸施術所か、病院・診療所かを区別する
- 広告、オーガニック記事、LPなど、媒体と流入経路を整理する
- 施術所名と広告文が、客観的な広告可能事項を中心にしているか確認する
- 妊娠結果、施術効果、技能、比較優良を約束していないか確認する
- 体験談やビフォーアフターで効果を印象付けていないか確認する
- 施術内容、費用、リスク、標準的な期間・回数を分かりやすく表示する
- Google Adsなどのターゲティング制限を確認する
- 参照したガイドラインの日付を記録し、所管自治体へ確認する
広告文とLPを別々の担当者が制作する場合は、使用できる事実、避ける表現、必要な開示情報を共通の確認表へまとめます。広告だけを修正しても、リンク先に強い効果表現が残っていれば、導線全体の問題は解消しません。
不妊治療に関わる鍼灸広告では、利用者の期待へ強い言葉で応えることよりも、提供できる施術の範囲と条件を正確に示すことが出発点です。広告とLPを一体で見直したい場合は、Liberateの広告運用支援をご覧ください。制作、配信設計、計測までを整理しながら、公開前に確認できる導線を整えます。