広告運用を社内担当者や代理店へ引き継ぐとき、管理者のログイン情報をそのまま共有すると、誰が何を変更したか追いにくくなります。退任後もアクセスが残り、請求や利用者管理まで不要に操作できる状態にもなりかねません。
引き継ぎでは、作業範囲を先に定義し、利用者単位で必要最小限の権限を付与します。招待を送って終わりにせず、承諾、実際の操作、見直し、解除までを一つの記録で管理します。
招待前に必要な作業を四つへ分ける
最初に、引き継ぐ担当者が行う作業を、閲覧、広告編集、請求確認、利用者管理の四つへ分けます。レポートを見るだけの人に広告編集は不要です。広告を編集する人でも、請求設定や他の利用者を招待する権限が必要とは限りません。
対象アカウント、担当期間、実施する作業、承認が必要な操作、連絡先、解除予定を記録します。「運用を任せる」という表現だけでは権限を選べないため、管理画面で行う具体的な作業へ置き換えます。
複数アカウントを扱う代理店では、個別利用者の直接招待と管理アカウント経由の接続を混同しないようにします。どの関係でアクセスするか、契約終了時に誰が解除するかを先に決めます。
ログイン情報を渡さず利用者単位で招待する
招待には担当者本人が管理する識別子を使い、共有パスワードや一つの共通アカウントを渡しません。二要素認証や組織のセキュリティ要件も確認します。
Google広告の公式ヘルプでは、アカウントへ利用者を招待してアクセスレベルを選び、後から変更・削除できると案内しています。また、セキュリティの推奨事項として、各利用者へ必要最小限のアクセスを付与し、不要になった利用者を定期的に削除することが示されています。2026年9月8日時点の案内であり、実際の権限名と画面は招待時に公式ヘルプと管理画面で再確認します。
管理者権限が必要なのは、他の利用者管理や特定の請求操作など、管理者だけが行える作業を担当する場合です。「代理店だから」「担当者だから」という理由だけで一律に管理者へしません。
招待後に承諾と必要操作を確認する
招待メールを送っただけでは引き継ぎ完了ではありません。本人が招待を承諾し、正しいアカウントへ入れること、必要な画面を閲覧できること、担当する操作だけを実行できることを確認します。
確認時は本番設定を不用意に変更せず、閲覧、下書き、承認フローなど安全な範囲で試します。権限が不足している場合は、できない操作と業務上の必要性を記録してから変更します。逆に不要なメニューが操作できる場合は、より小さい権限へ戻せないか確認します。
引き継ぎ項目を整理するには、広告代理店を変更するときの引き継ぎチェックリストも使えます。アカウントだけでなく、計測、素材、変更履歴の所在も確認できます。
付与記録に見直し日と解除担当を入れる
権限台帳には、対象アカウント、利用者、役割、付与理由、招待日、承諾日、確認した操作、見直し日、解除担当を残します。メールアドレスなどの個人情報を広い共有文書へ転載せず、管理範囲を限定します。
見直しのきっかけは、契約終了、異動、退職、担当変更、業務範囲の縮小、管理アカウントの変更です。定期見直し日も置きますが、年一回など一律の間隔だけに頼らず、人や契約の変更時に確認します。
アカウント所有と権限の関係を整理する場合は、広告アカウントを自社で所有する理由も確認してください。外部担当が変わっても事業者側が管理を継続できる状態を考えられます。
権限不足と権限過多を別々に直す
必要な作業ができない場合、すぐ管理者へ上げるのではなく、対象操作、必要な期間、承認者を確認します。一時的な作業なら、作業後に戻す日と担当者も決めます。
反対に、請求情報や利用者管理が不要なのに操作できる場合は、権限過多として見直します。担当者が安全に作業できているから放置するのではなく、将来の誤操作や不正利用の影響範囲を小さくします。
権限名や提供機能は媒体ごとに異なります。Google広告とLINEヤフー広告でも利用者招待と複数の権限レベルがありますが、同じ名称・同じ範囲とは限りません。媒体をまたぐ引き継ぎ表では、名称をそろえるより「何ができるか」を記録します。
引き継ぎ完了後もアクセスを再確認する
完了時には、担当者が正しいアカウントへ入り、必要な操作だけができ、不要な旧担当者が残っていないことを確認します。請求や利用者管理を含む場合は、承認者がその範囲も読み合わせます。
次回確認では、台帳の利用者と管理画面の利用者を照合し、契約・担当・権限が一致しているかを見ます。差があれば、誰がいつ変更したかを確認し、理由が不明なアクセスはセキュリティ確認へ回します。
安全な権限付与は、管理者を増やすことでも、作業を止めることでもありません。担当作業を具体化し、その作業に必要な範囲だけを利用者単位で渡し、承諾から解除まで追跡できる状態を作ることです。